更新日:2025/6/10 公開日:2025/6/9
現行の民法は単独親権制度を採用しており未成年の子のいる夫婦が離婚するには一方の親を親権者として指定しなければなりません。
なお、改正民法(2026年5月24日までに施行予定)では単独親権制度を廃止して共同親権制度を採用することになりました。そのため、改正民法施行後は離婚の際に一方の親を親権者に指定する必要はなくなります。
一般的には、未成年の子の親権者になるのは母親であり、父親が親権者になるのは難しいというイメージがありますが、実際には父親が親権を獲得したケースもあります。
今回は父親が親権を獲得するための条件について、実際のケースを紹介しながら解説します。
令和5年の司法統計open_in_newによれば、離婚調停の案件において、未成年の子の親権者を母親と指定したケースは全体の約94%となっており、実際に多くのケースでは母親が親権者となっています。
もっとも、逆を言えば、すべてのケースにおいて母親が親権者となっているわけではなく、父親が親権者になっているケースもあるのです。
父親が親権者になるのはどのような場合なのかを解説する前に、そもそも親権者はどのように決まるのか、また、どうして母親が親権者になるケースが圧倒的に多いのかということについて解説します。
離婚後の未成年の子の親権者を指定する方法は、①夫婦間の合意による方法と②裁判所の一方的判断による方法の2つあります。
夫婦間の合意による場合には、裁判所を利用することなく合意できる場合と離婚調停での話し合いにより合意できる場合があります。
また、裁判所の一方的判断による場合には、離婚調停での話し合いでも親権者だけは合意できず裁判所に判断してもらう場合(調停に代わる審判)と離婚訴訟における判決による場合があります。
裁判所は諸般の事情を総合的に考慮して子の利益を最優先に考えたうえ、親権者を指定します。実際には裁判所は「現状維持の原則」を基本として親権者を指定する傾向にあります。
つまり、裁判所は、原則として、現在の子の監護養育に問題がないのであれば、現状維持のまま親権者を指定するのです。現実として、婚姻中あるいは別居中、母親が未成年の子の監護養育を担うことが多いため、母親が親権者として指定されるケースが多いに過ぎないともいえそうです。
また、母性優先の原則というものがあり、これは乳幼児については母親の監護と愛情が重要であるという考えです。しかし、最近では、母性優先の原則を親権者指定の判断基準として重視するケースは少なくなっているようです。
原告(父親)が、原告の母に監護を委ねたことはやむを得ない面があり、長女の福祉に反する結果が生じていないこと・・・原告が親権者として不適格であるとまではいえないこと・・・長女の意向を考慮すれば、長女の親権者を原告と定め、引き続き長女の監護養育者を原告にゆだねることが、長女の福祉にかなうというべきであるから、長女の親権者を原告と指定するのが相当である。(福岡家庭裁判所平成28年3月18日判決)
本件はある夫婦の長男と長女が母親と一緒に自宅を出た後、長女だけは父親のもとに戻り母親の了承のもと同居を続けている中で親権者の指定について争われた事案です。
裁判所は父親が長女の監護を自分の母親に委ねたのは長女が当時通学していた学校での人間関係のトラブルから、父親の母のところに行きたい、転校したいと言い出した経緯があり、やむを得ない面があり、長女の福祉に反するものではなく、また、長女の意向に関しては複雑な思いが交錯しているものの父親が親権者となることを希望しており、そのような意向について父親の働きかけの影響は限定的であるとして、父親を親権者と指定しました。
親権者を指定する際に重視されるのは現状維持の原則と子の意思の尊重であり、父親でも現状の監護養育に問題がなければ子の意向に反しない限り、親権者として指定される可能性が高いです。
子の意向が考慮されるのは、ある程度が子が大きくなっている場合であり、おおよそ10歳以上が目安になります。現状維持や子の意向が重視されるとしても、無理やり子を連れ去って同居したり、子に心理的圧力を掛けて操作するなどの行為は却って親権者として不適格と判断される事情になるため注意しましょう。
離婚後の子の親権者は母親が指定されることが多いのは事実ですが、父親が親権者になる場合もあります。どのようにすれば親権を取ることができるかについてはケースに応じて異なることもありますから、父親だから親権は取れないと諦めるのではなく、一度弁護士に相談することをおすすめします。
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