更新日:2025/6/10 公開日:2025/6/3
夫のモラハラがひどく離婚したいと思いながらも子どもがまだ小さいから、離婚後の生活が不安だからという理由で離婚に踏み切れないケースは少なくありません。それでも長年の夫のモラハラに対して、ついに離婚を決意するような場合、どのような問題があるのでしょうか。
今回は、モラハラ夫と熟年離婚する場合の問題について、特に年金分割や退職金などのお金の問題を中心に解説します。
まずはモラハラを理由に離婚できるのか、について解説します。
離婚は、夫婦間の合意(離婚調停での合意を含みます。)による場合と離婚訴訟における裁判所の判決による場合の2つの方法があります。
モラハラをするような夫ですから自分の非を認めず離婚に応じてくれないこともありますから、モラハラ夫と離婚するには裁判するしかないことも珍しくありません。
この場合、裁判所は民法上の離婚事由がなければ離婚を認めてくれません。
では、夫のモラハラは裁判上の離婚事由になるのでしょうか。
この点について、結論としては、ケースバイケースとしか言いようがありませんが、裁判離婚が認められるケースもあります。
具体的には、民法上の離婚事由の1つに「婚姻を継続しがたい重大な事由」というものがあり、夫のモラハラ行為がこれに当たると判断されるケースがあります。
もっとも、裁判では証拠が重要になりますから、夫のモラハラを理由に離婚する場合にはモラハラ行為の証拠をちゃんと残しておくことが重要になります。
モラハラ夫と熟年離婚する場合、夫に対して離婚慰謝料を請求することも重要ですが、そのほかに財産分与も重要になります。
財産分与とは簡単に言えば夫婦生活において夫婦が協力して築き上げた夫婦共有財産を清算する制度です。
ここでは、熟年離婚において特に問題になりそうな、①年金の分割と②退職金の分割について解説します。
年金分割に関しては、現在では法的に制度が確立されています。
具体的には、①合意分割と②3号分割の2つがあります。
まず、合意分割は婚姻期間中の標準報酬等を夫婦間の合意、合意できない場合は裁判所の審判・判決により(通常は2分の1の割合)定まった割合により分割するものです。
次に、3号分割とは、3号被保険者だった配偶者の請求により平成20年4月1日以降の3号被保険者であった期間に係る標準報酬等の総額を2分の1の割合で分割するものです。
なお、年金分割とは、将来支給される年金額自体を分割するものではなく、将来支給される年金額を計算する際の基礎になる標準報酬等の記録が分割されるものです。
次に退職金に関しては、既に支給された退職金については、支給後相当期間経過していない限り、財産分与の対象になります。
問題は将来支給される予定の退職金の分割です。
この点については、まず、将来支給される可能性の高い退職金については財産分与の対象になるとされています。
分割対象の退職金の基準時については、主に離婚時(破綻時)に自己都合退職した場合に支給される退職金と定年まで就業した際に支給される退職金のいずれかが事案に応じて決められ、更に夫婦の協力により形成された財産の清算という観点から、その退職金額に婚姻(同居)期間を乗じ、在職期間を除したものを対象とします。
相手方(元夫)が勤続30年超の勤務先を退職すれば支給を受ける蓋然性の高い退職金は、財産分与の対象となる夫婦の共有財産に当たるところ、本件における一切の事情を考慮すれば、相手方に対し、申立人(元妻)への財産分与として、相手方が別居直前に勤務先を自己都合退職した場合に支払われるべき退職金額に同居期間を乗じそれまでの在職期間を除して算出された額の5割に相当する金額につき、勤務先からの退職金の支給を条件に、その支払を命ずるのが相当である。(東京家庭裁判所平成22年6月23日審判)
本件は信用金庫に30年以上勤続する元夫に対し、将来退職金の支給される可能性が高いことを理由に退職金を財産分与の対象とした裁判例ですが、①対象になるのは別居時に自己都合退職した場合に支給される退職金の額を基準にしていること、②将来実際に退職金が支給されることを条件としています。本件は裁判の時点で既に元夫が55歳と定年間近ではありましたが、退職時に支給される退職金の額ではなく、別居時に自己都合退職した場合に支給される退職金を基準に財産分与を認めました。
モラハラ夫と熟年離婚する場合には、老後のお金の問題が心配です。
この点、まず年金に関しては、合意分割あるいは3号分割の制度により特に問題なく分割が可能です。
また、退職金に関しては、退職金の支給される可能性の高い場合には財産分与の対象となり、分割対象の退職金の基準時や分割の条件・方法に関しては事案に応じ裁判所が判断します。
熟年離婚の場合には婚姻期間が長期にわたること、離婚時に高齢になっていることから、離婚後のお金の問題として財産分与について争われる場合が少なくありません。中でも退職金の財産分与については法律的に難しい問題をはらんでいます。ですから、モラハラ夫との熟年離婚を考えている方は一人で悩む前に一度弁護士に相談することをおすすめします。
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