不倫した親でも親権は取れる?|裁判で重視されるポイントとは【弁護士による事例解説】

更新日:2025/6/10 公開日:2025/6/9

不倫した親でも親権を持てるの?離婚後に争点となる理由とは

不倫は法律上の離婚事由の1つですが、不倫した側が裁判上の離婚を求めた場合には、有責配偶者からの離婚請求として、裁判所は容易に離婚を認めません。
しかし、有責配偶者から離婚を求めた場合でも、夫婦双方の離婚することについて合意のある場合はもとより、長期にわたり別居状態が継続しており夫婦関係を維持することが適切ではないと判断され例外的に有責配偶者からの裁判離婚の請求が認められる場合もあります。

では、このような場合に離婚後の子の親権者に不倫した親が指定されることはあるのでしょうか。

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不倫した親からの離婚請求は認められるのか?

そもそも、不倫が原因で夫婦関係が破綻した場合、相手方の配偶者が離婚に応じない場合に不倫した親が裁判により離婚を求めることができるのでしょうか。

この点について、裁判所は主として離婚原因を作った者(有責配偶者)からの離婚請求は原則として認めません。ただし、裁判所は、このようなケースでも未成熟の子の有無、別居期間、離婚を認めることにより生じる非有責配偶者の不利益の有無・程度を考慮して例外的に離婚を認めることがあります。

不倫した親が親権者になれるのか、という問題は、離婚について夫婦間で合意した場合や裁判所が例外的に有責配偶者からの離婚請求を認めた場合に生じます。

不倫は親権に影響する?裁判で重視されるポイントとは

法律は親権者の変更に関する規定において「子の利益のため」と定めるだけであり、その指定に関して明確な基準を定めていません。

抽象的に言えば、裁判所は、子の利益の観点から諸般の事情を総合的に考慮して離婚後の親権者として適任である親を親権者として指定します。

ここでいう「諸般の事情」とは、具体的には従前の監護状況及び現在の監護状況父母の監護能力(監護意欲・心身の健康状態・居住及び教育の環境・経済状況など)、子の状況(年齢・心身の発育状況・従来環境に対する適応状況・環境変化に対する適応性・父母との親和性・監護者選択に関する意向など)、面会交流についての双方の意向などです。
ここでポイントになるのは、親権者指定の判断において、離婚の原因についての責任の有無は直接影響しないという点です。
逆に言えば、子を家に一人にして育児放棄しながら不倫の相手と一緒に過ごしていたなど、不倫中の行動が養育する親として適格性を欠くものであると判断されるような場合はあるということです。

不倫した側の親が親権を獲得した裁判例紹介

判旨

原告(母親)と被告(父親)の婚姻関係の破綻の原因は、原告の不貞と認めるのが相当である。・・・一般に、子供の健全な育成のためには、生活環境が変化しないことが望ましく、証拠等によれば、子供らは、原告と被告が別居した後、原告とともに生活していること、学校へはE(原告の不貞相手)宅から通学しており、特段の不自由は感じていないこと、長女Aは、今後被告とともに生活することを望んでいないことが認められ、以上諸般の事情にかんがみれば、長女A及び長男Bの親権者は、原告と指定するのが相当である。(東京地方裁判所 平成15年(タ)第409号、平成15年(タ)第786号 離婚等本訴請求事件、離婚等反訴請求事件 平成17年1月25日)

解説

本件は、父親が単身赴任中に母親が異性と不貞の関係となり子を連れて自宅から不貞相手の自宅に転居した後に離婚することになり、子どもの親権について争われた事案です。

裁判所は母親の不貞が原因により夫婦関係は破綻したと認定しましたが、子の親権者の指定については、特に母親の不貞の事実を取り上げることはなく、専ら子の利益の観点から現状維持の原則と子の意向に従い、母親を親権者と指定しました。

このケースでは、不倫した母親が育児放棄するなどの行動をしていないため、不倫の事実は親権者の判断に際して全く言及されることはなく、むしろ母親と一緒に不貞相手の自宅に住み、そこから学校に通学しており、子に特段の不自由はないと判断しています。このように不倫の問題と親権の問題は直接には関係しないのです。

弁護士不倫と親権で誤解しやすいポイントを押さえておこう


まず、不倫した側の親から離婚を求める場合、夫婦間の合意のできないときには、裁判離婚を求めたとしても有責配偶者からの離婚請求を裁判所は原則認めないことに注意しましょう。
次に、不倫が原因により夫婦関係が破綻して離婚することになった際の子の親権者を決めるに際しては、不倫したことにより親権が取れないということはありません。親権の問題は夫婦間の問題というよりは、子の健全な育成のためにどちらの親が養育するのにふさわしいかを決める問題なのです。

不倫したから親権は取れない…と思う前にご相談を

不倫により夫婦関係が破綻した場合、離婚後の子の親権者を不倫した親が取るのはおかしいと考える方もいるかも知れません。あるいは、自分は不倫をした側の親であるから親権を取ることはできないと考えてしまう方もいるかも知れません。

しかし、親権者の指定において不倫をした親であるから親権者にはなれないということはありません。親権者の指定はあくまでも子の利益の観点から判断されるものであり、不倫した親でも問題なく子を養育しており、子の意向に反しないのであれば、親権者として指定されます

ただし、不倫していたことが子の養育の観点から問題になりうる場合もありますから注意しましょう。不倫した側の親だから親権者になれないわけではありませんが、ケースによっては不倫したことが親権者の指定の判断において悪影響となる場合もありますから、一人で悩む前に一度弁護士に相談することをおすすめします。

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